花をもらうのは、いくつになっても嬉しいものだ。
日本でも近年、それまで存在しなかった西洋風のブーケが贈答品として定着したが、昔は贈答品としての花束を普通の花屋で見かけることがなかった。だから、まだ若かった夫がわたしの母へのプレゼントとして自分で買って来たのは、そのまま仏壇や墓の花瓶に挿せる三角形に形づくられ全部の花が前を向いているものだった。
過去の笑い話はさておいて、ユリはそうした花束の中で、バラと並んで頻繁に使われる花の一種だ。
しかし、ユリが猫にとって猛毒だということを知っているひとはまだ少ない。
上のポスターは米国動物虐待防止協会(ASPCA)にも置いてあるらしい。元はUC Davis(カリフォルニア大学デービス校獣医学科)で配布されているものだ。
近年、オーストラリアの花屋で見かけるようになったポスターにも、「ユリは猫にとって死に至るほどの猛毒になります。ブーケにユリがある場合は、飾る場所に猫がいるかどうかもう一度確認してください」とある。
食べ物に関してはかなり気難しいイキモノのくせに、香りなのか好奇心なのか、ユリの葉や花を食べて獣医に運び込まれる猫が後をたたないからだ。
最近の研究では、花が最も毒性が高いことが証明されているが、茎も葉も、そしてユリの茎が浸かっている水でさえ毒を含んでいる。つまり、ユリの全ての部分が猫にとっては有害なのだ。
通常は、摂取から2-3時間以内に嘔吐、ヨダレ、食欲不振などが現れ、次に尿の異常となる。そして、一時的におさまっても毒素の吸収は内蔵の広範囲に渡り、24時間たつと多尿と腎障害が始まる。そして、その後に脱力、多飲、無尿、低体温となり、摂取後3-5日以内に急性腎不全で死亡するケースがとても多い。
特に、日本でも花屋や庭でよく見かけるAsian Lilyを食べてしまった猫の死亡率は、24時間以内に治療がほどこされない場合50%から100%にも跳ね上がる。
日本語サイト検索で、関連情報が必ず引っかかるはず。わたしが参考にしたサイト(全て英語)のリンクは下に挙げた。
最初のASPCAのサイトにある「猫に危険な植物」は必ずしも死を招くほどの猛毒ではないものも多い。食べると、嘔吐や口から泡をふくだけのものもある。たとえばシクラメンなどがそうだ。写真があるので、英語がわからなくてもかなり良い目安となると思う。
ASPCA アメリカ動物虐待防止協会の「猫に毒性作用をもつ植物の写真と名前」
Catatonia「ユリは本当に猫にとって毒なの?」
University of Sydney Feline Health Articles シドニー大学「猫のユリ中毒について」
実は、同僚の外国語学科主任の娘はまさにそのユリ中毒によって愛猫をうしなった。2年前のことだ。誕生日のプレゼントにもらった花束にユリが含まれていたのだ。
カウンターの花瓶に入ったそのユリの花びらを半分ほど食べた6ヶ月の仔猫は、半日ほどしても嘔吐がとまらず獣医クリニックに運ばれ、「50%のチャンス」に賭けたが次の日に虹の橋を渡ってしまった。
この話を聞いたのは、ユリの花束を学校で何かのお礼にもらった彼女が、「ありがたいけれど、これはユリが入っているから家に持って帰るわけにはいかないわ」と言ったときだった。その花を彼女に渡したひとはもちろんその場にもういなかったけれど、「もう、たかが花びら半分で猫を殺したくないの」と。そして「猫を飼っていないひとは、知らないのよねえ」というため息に、「猫を飼っているくせに」知らなかった当時のわたしは愕然とした。
中毒の死に至る危険性はもちろん個体差と年齢にもよるが、食べたとわかった時点から6時間以内に治療をほどこした場合、死の危険性は回避できることが多い。
ただし、それよりももっと有効な手段がある。
ユリを家の中や猫の歩く庭に置かず、あなたの愛する猫たちが決して近づけないようにすることだ。
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